個人経営の飲食店の方は必見!地方でも新鮮な魚を手に入れる仕入れ方法をプロがご紹介
飲食店にとって『鮮魚の仕入れ』は最も難しい永遠の課題
日本の代表的かつ特徴的な食文化である寿司や天ぷら、お刺身。これらの料理には当然のことながら『鮮魚』が欠かせません。
鮮魚を扱いたいけれど、どうしても仕入れに専門的な知識やノウハウが必要なため二の足を踏んでいる飲食店の方も多いのではないでしょうか?
さらに個人経営の飲食店の場合、どうしても市場に足を運ぶ時間やコストが心配ですよね。
本記事では飲食店経を運営している店長さんや経営しているオーナーさん向けに、鮮魚仕入れの代表的な方法とそれぞれのメリット、デメリットをご紹介します。
鮮魚の仕入れ方法には大きく分けて4つある
鮮魚の仕入方法:市場へ行って仕入れる
まず挙げるのはこちら。最寄りの地方市場(地方卸売市場)や中央市場(中央卸売市場)へ足を運んで、現物を自身の目で確認して仕入れる方法です。
日本最大の取扱高を誇る中央卸売市場である豊洲市場(旧築地市場)には、毎日多くの料理人の方や飲食店のバイヤーが足を運び、自らの目で魚を選んでいます。
市場へ行って仕入れるメリット
自分の目で気に入ったものを仕入れられる
飲食店たるもの、自分で実際に見て気に入った食材を使いたいもの。市場にはたくさんの鮮魚が並んでいて、それぞれ扱い方やサイズ、価格が大きく異なります。
最も自分の店に合っているものをチョイスできるのは市場に行く最も大きなメリットではないでしょうか。
食材の仕入れ単価が下がる可能性がある
市場から直接仕入れれば、基本的にはいわゆる中間マージンを省いた価格で仕入れることができるため食材が安く仕入れられる可能性があります。
さらに市場での付き合いが長くなってくると、仕入れの際に値引きしてくれたり時化の際に優先して良い魚をとっておいてくれたりすることもあります。
珍しいものや掘り出し物が多い
例えばマグロの希少部位や一般には流通していないような魚種や、水揚げ量が極端に多かったために相場が急落した鮮魚など、市場には日々様々な発見があります。
これらをうまく活用することができれば、生の情報を食べに来てくれたお客様へ伝えることができたり、珍しい食材や料理で他店と差をつけることができるのではないでしょうか。
市場へ行って仕入れるデメリット
移動コスト、時間コストがかかる
仕入れの際に市場に行くということは、当然ながら移動コストと時間コストが発生します。
市場に行くまでのガソリン代や高速代、車がない場合は電車やバスの運賃など、費用もかかるうえ朝仕入れに行かなくてはならないので疲れもたまります。
仲卸業者との信頼関係を築くのに時間がかかる
市場では主に仲卸業者から食材を仕入れることになると思いますが、仲良くなって有益な情報を得るには毎日足繫く通ったり、ある程度の量を仕入れないとなかなか相手にしてもらえなかったり…なんてこともあります。
最近ではそんな仲卸業者は少なくなりましたが、鮮魚が多く獲れていた時代を引きずっていて気難しい人も多いです。市場で信頼関係を築くのもなかなか骨が折れます。
補足:市場で水揚げされたばかりの鮮魚をセリで買えないの?
水揚げされたばかりの新鮮な鮮魚を漁師から仕入れるには、基本的にそれぞれの市場でセリに参加しなければなりません。セリに参加する権利を買参権(ばいさんけん)といいます。
飲食店単独で買参権を持っていることは少ないでしょうから、一般的には市場でセリに参加している仲卸(なかおろし)業者から仕入れることになると思います。
鮮魚の仕入れ方法:産地直送(産直)
『産地直送』。文字を見ただけでなんとなく鮮度が良さそう、美味しそう、健康的、なんてイメージをお持ちではないでしょうか。
現在では流通や保冷の発達によって、九州や北海道で朝水揚げされた鮮魚が夜には東京で食べられる、というレベルになっています。
また、中間マージンがない分安く仕入れられるのでは?と思う方もいると思いますが真実なのでしょうか?
産地直送のメリット
生産者や漁獲者がわかる
たとえば北海道の牡蠣生産者から直接牡蠣を送ってもらうことで、『北海道厚岸町〇〇さんの牡蠣』みたいにお客様へ情報を提供することができます。
ごく普通のイワシでも、『〇〇漁港の〇〇さんから仕入れたイワシ』みたいにすることでプレミアム感を演出することができます。
より新鮮な食材を手に入れられる(可能性がある)
産地直送することにより、水揚げされたばかりの鮮魚をすぐに送ってもらい食材を手に入れるまでの時間を短縮できる場合があります。
しかし現在の鮮魚流通は非常に高度化しています。後述しますが、産直でも市場で仕入れても鮮度は変わらない可能性があります。
より安価に仕入れられる(可能性がある)
産地からうまく直接仕入れができれば、東京では高値がついている鮮魚が数分の一くらいの価格で仕入れることができる可能性があります。
東京では高級魚扱いで1kgあたり1,000円くらいする鮮魚が、産地では1kgあたり200~300円、なんてこともザラにあります。
産地直送のデメリット
価格や品質が不安定になりがち
生産量がある程度読める野菜や果物と違って、鮮魚は海の状況や漁模様によってはまったく水揚げがなかったり、魚の状態がいまいちなものばかりなんてこともあります。
産地の方は飲食店の要望に応えようと、相場が高い時でも一生懸命仕入れて発送しようとしてくれるため、食材が届いてから「この品質でこの価格!?」なんてことも非常によくあることです。
また、欲しいときに欲しい魚種や欲しいサイズの水揚げがあるとは限りません。産地直送はある程度妥協して折り合いをつける必要があるのです。
産直なのにむしろコストが上がる!?
産地直送は基本的に宅急便などを利用することになるはずです。通常の市場流通のように大きな専用トラックで市場に何トンもまとめて運ぶわけではないので、運搬コストが非常に割高になります。
たとえば5kg分の鮮魚を発送しようとすると、宅急便で運んだ場合は氷や発泡スチロール代金などを含めると1箱で2,000円近くかかる可能性がありますが、市場流通の送料なら数百円で済むのです。
市場で仕入れるのと鮮度が変わらない!?
デメリットというよりは誤解されていることが多い点なのですが、翌日着の宅急便で送るパターンでも、市場で仕入れるもの基本的に鮮度は一緒です。
東京の豊洲市場を例に挙げると、北海道の陸送や沖縄でない限りは、基本的には水揚げ日の翌日に市場のセリ場に並ぶようになっているのです。
産地直送を謳っている飲食店に話を聞いたとき、高い仕入れ単価と高い送料で市場と同じ鮮度の魚を仕入れているパターンも多く見受けられ、意外と誤解されていることなんだなと感じています。
鮮魚の仕入れ方法:スーパーや鮮魚店など小売店から仕入れる
小売店から仕入れるメリット
なんといっても仕入れにかける時間が短縮できる!
最寄りのスーパーや鮮魚店などを利用できれば、仕入れにかける時間が大幅に短縮できます。
配送業者の都合によって入荷が遅れたりすることもないため、配達はまだかなーというストレスもなくすぐに仕込みができるでしょう。
小売店から仕入れるデメリット
品質は市場から仕入れるよりも一段劣る
スーパーや鮮魚店で陳列される鮮魚は、基本的に一番重視しているものが『価格(プライスゾーン)』です。
一般家庭は価格に非常にシビアなため、悪い言い方をすれば「少し高くても良い魚、よりは少し鮮度が落ちても安い魚」を並べるのがスーパーの常識となっています。
市場の仲卸は逆に、飲食店の欲しい品質をきちんと理解しているので多少高くても品質の良い魚を仕入れてきます。そこに明確な品質の差が出てくるのです。
ネットの仕入れサービスを利用する
最近ではインターネットで簡単に鮮魚を注文できるサービスが増えてきており、近年急激にシェアを伸ばしている印象があります。
ネット仕入れサービスのメリット
いつでもどこでも鮮魚を注文できる
飲食店からでも家からでも外出先からでもスマホから注文することができるため、仕入れにかける時間は短縮できるでしょう。
電話がつながらなかったり正しく注文が通っていなかったりFAXが届かなかったり…なんていう前時代的な心配をする必要もありません。
鮮魚の産地やサイズがはっきりしている
ネット仕入れなら事前に鮮魚のサイズや魚種、産地などがある程度はっきりしているため、翌日のメニューが立てやすいのもメリットのひとつでしょう。
場合によってはこの鮮魚は脂がのっているとか、寿司種にはこれがおすすめなんていうリアルな情報もあったりするのも、情報伝達が早いネットならではのメリットかもしれません。
豊洲市場の仲卸からネットで直接仕入れ可能に!?
豊洲市場といえば日本最大の取扱高を誇る中央卸売市場です。500社を超える専門仲卸が存在し、東京をはじめとする日本の魚食グルメはここで育まれていると言っても過言ではないと思います。
市場移転とともに発足した仲卸組合公式サービス
2018年10月に築地市場より移転したタイミングで、豊洲市場の仲卸組合が仲卸から直接ネットで鮮魚などの食材を注文できるサービスが始まりました。
これまで顔を合わせて直接出向かなけば仕入れられなかった豊洲市場の鮮魚が、地方からでも手軽に仕入れられるようになったのです。
関東エリアならなんと朝出荷して当日夕方に飲食店に届く
『東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、群馬県、栃木県、山梨県、茨城県』の関東一都七県なら、豊洲市場から鮮魚をはじめとする食材を朝出荷して当日の夕方に飲食店に届くサービスです。
つまり東京都内の一等地と同じ食材を、スマホで簡単にまったく同じ鮮度で仕入れられるようになったのです。これはすごいことだと思いませんか。
詳しくはこちら
このサービスについては別の記事で使い方やメリット・デメリットなどを詳しく説明しています。
月一回、週一回のスポット注文でもOKで、月額費用や登録費、会員費などは一切かからないので(さすが仲卸組合公式!)、ぜひ一度ご覧ください。
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