流通のプロが教える、魚の流通と本当に美味しい魚売場を見つけるポイント

昔ながらの魚屋は激減している

最近、魚屋さんに足を運んだ記憶ってありますか?昔ながらの個人経営の魚屋は時代とともに激減し、とくに都会では今や絶滅状態です。

今ではご家庭で魚を購入するときに最も利用されるのはスーパーマーケットではないでしょうか。ただ、スーパーマーケットの魚売場はお店によって品質や品ぞろえがまちまちだったりします。

魚屋が激減している近年において、本当に美味しいお刺身や干物などに出会うことが難しくなり、食べる機会も減ってきてしまっています。

一方で良質な魚屋は年々売り上げを伸ばしている

そんな中、実は鮮魚を販売して毎年売り上げを伸ばしている魚屋やスーパーの魚売場もたくさん存在しています。

では、良質な魚屋(魚売場)とそうでない魚屋はいったい何がどう違うのでしょうか?そして、私たちがそうしたお店を見分けるポイントはどのようなものがあるでしょう?

市場や小売店、飲食店など水産流通の業界を歩いてきた私たちが、流通から見た本当に美味しい魚屋を見分けるポイントをお伝えします。

これは飲食店の方が魚を仕入れる際にも使えるテクニックです。ぜひ覚えておいてください。

一般的な魚屋の流通ルートとは?

良質な魚屋を見分けるには、まずは鮮魚をはじめとした水産物の流通ルートを少しでも知っておく必要があります。

なんとなくご存知の方もいらっしゃると思いますが、鮮魚がどのような経路で皆さんのご家庭に届くかを確認してみましょう。

※以下、東京都内のスーパーや魚屋での、鮮魚をイメージした流通経路です。

水揚げされた魚が産地市場でセリにかけられる

鮮魚の流通① 漁師→【セリ】→産地仲卸業者

まず、『漁師』によって漁獲され漁港に水揚げされた魚は、産地市場(漁港)で『産地仲卸業者』が複数集まる産地市場でセリにかけられます。

水揚げされた魚のイメージ

産地仲卸業者は近隣の小売店や飲食店、魚屋などの顧客に鮮魚を卸売します。

セリは朝~昼に行われるため、産地市場の付近では基本的にその日の朝水揚げされた新鮮な鮮魚が味わえる可能性があります。

産地市場から消費地市場へ魚が運ばれる

漁師→【セリ】→産地仲卸業者→卸売業者

東京の卸売業者(大卸)とつながりのある産地仲卸業者は、セリで仕入れた鮮魚を豊洲市場など東京の市場(消費地市場)に向けて出荷します。

移転した直後の豊洲市場
移転した直後の豊洲市場

豊洲市場などでセリにかけられる

漁師→【セリ】→産地仲卸業者→東京の卸売業者→【セリまたは相対】→仲卸業者

翌朝、消費地市場に到着した鮮魚は卸売業者(大卸)によって東京の市場の仲卸業者へセリや相対(買い手との協議によって、卸売価格、数量その他の条件を決定する売買方法)で卸売されます。

豊洲市場のマグロのセリの様子
豊洲市場のマグロのセリの様子

仲卸業者から魚屋へ魚が運ばれる

漁師→【セリ】→産地仲卸業者→卸売業者→【セリまたは相対】→仲卸業者→魚屋

仲卸業者が仕入れた鮮魚が、魚屋や飲食店などへ販売されます。※飲食店の場合はさらに納品業者が仕入れて販売するパターンもあります。

仲卸店舗のイメージ
仲卸店舗のイメージ

このとき、たとえばアジの鮮魚なら5kg入りの発泡スチロール箱に詰められた状態や、鮭なら半身や丸魚の状態、干物なら数十枚入りの単位で取り扱われ、一般の家庭で消費できる量ではありません。

魚の状態によって切り身や刺身に加工され消費者のもとへ

漁師→【セリ】→産地仲卸業者→卸売業者→【セリまたは相対】→仲卸業者→魚屋→消費者

そしてようやく魚屋に運ばれた鮮魚は、職人さんによって皆さんに馴染みのある切り身や刺身の状態に加工されます。

また、干物などの加工品は消費者が買い求めやすい数枚の単位に分けられて販売されます。

最終的に魚屋で刺身や切り身になる
最終的に魚屋で刺身や切り身になる

より良質な魚屋を選ぶポイントは?

では、ここからが本記事の本題です。上記の流通を踏まえて、より美味しい魚屋(スーパーならより良い鮮魚売り場)を選ぶにはどのようなポイントがあるでしょうか?

天然の生魚や貝類が多く品揃えされている

天然の生魚というのは基本的に保存がききません。さらに種類が豊富なうえ食べ方、値付け、鮮度の見極めなど幅広い知識が必要な、非常に販売が難しい商材なのです。

天然の鮮魚を多く扱っているということは、知識の豊富なスタッフが多くいることが予想できます。

対面販売コーナーがある

対面販売コーナーがある魚屋は、生魚の取り扱いに自信をもっているということが伺えます。調理方法や保存方法も教えてくれるはずです。

魚の種類がいつも異なっている

魚には春夏秋冬の旬があります。いつ足を運んでも魚の種類が違う魚屋は、旬の知識があり、その時々で美味しい魚を仕入れていることが伺えます。

加工品の種類が豊富で、珍しいものが並んでいる

魚屋で売る水産物は鮮魚だけではありません。日本には古くから魚介類を使った加工品が本当に多くあります。

例えば干物ならアジやホッケの開きだけでなく、キンキやツボダイ、カマス、ハッカクなど少し変わった干物を置いてあるお店は、美味しい魚を並べようという想いがあると考えられます。

『価格が高い=いい魚』は間違い!

よくテレビや雑誌などで『鮭の切り身一切れ1,500円』超高級魚屋が紹介されることがありますよね。

一般的にはさぞかし美味しいんだろうなと思われていますが、普通の魚屋と比べて数倍の値段が付けられているからといって決して数倍の美味しさが保証されているわけではありません。

高級鮮魚は基本的に単純に数が少ないだけ、という場合もあります。さらに魚屋のブランド効果で非常に高値になっているんですね。

豊洲市場は最も良質な水産物が集まる市場

2018年に築地市場から移転して新設された『豊洲市場(正式名称:東京中央卸売市場豊洲市場)』は、日本全国はおろか世界中から魚が集まる市場です。

高値がつく市場には良質な魚が集まる

なぜ豊洲市場に良質な魚が集まるのかといえば、東京は買い手(需要)が多いため最も高値がつくからなのです。

さらに全国からの流通網と最新の閉鎖型施設を活かし、常に安定して良質な水産物を得られる市場でもあります。

豊洲市場の卸売業者や仲卸業者は、東北や北海道が時化のときは西日本から、西日本が時化のときは東日本や外国などから鮮魚を集め、魚屋や飲食店に常に安定した量と質を提供するようになっています。

良質な水産物を卸す仲卸業者

そんな豊洲市場の中で、おすすめできる仲卸業者を1社ご紹介いたします。

塩干品専門仲卸【瀬古】

豊洲市場の仲卸業者『瀬古』さんは、大正11年創業の豊洲市場でもかなりの老舗です。瀬古さんは前述した豊洲市場の前身である築地市場の起源となった日本橋魚河岸時代から干物をはじめとする塩干品(えんかんひん)を扱う仲卸業者です。

創業なんと1922年(大正11年)、まもなく創業100周年を迎える老舗です。

瀬古さんは塩干品(干物や珍味、魚卵など)を中心とした水産加工品を取り扱い、常時100種類を超える豊富な品揃えで、本記事で紹介したような良質なスーパーやデパートといった小売店、各種飲食店に卸売しています。

全国各地の魚を日々目利きし、味の良さは当然ながら、安心・安全な食材を多くの顧客へ提供し多くの顧客から厚い信頼を得ています。

豊洲市場 瀬古さんの店舗までのアクセス

【瀬古】豊洲市場店舗
【瀬古】豊洲市場店舗

普段豊洲市場に足を運んでいらっしゃる方や、これから市場での仕入れを考えている方は一度瀬古さんへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

豊洲市場は5街区青果棟、6街区水産仲卸売場棟、7街区水産卸売場棟の3つの建物に分かれており、瀬古さんの店舗があるのは6街区水産仲卸売場棟の1階、第一通路と第二通路の間、8000番店舗番号8017です。

来場する際は市場のお休みの日(休市日)にご注意ください。また、朝8時ごろまでにご来場することをおすすめいたします。

電車で来場する場合

豊洲市場へのアクセスは公共交通機関が便利です。ゆりかもめ『市場前』駅で下車し、改札を出て右手に進んでください。5分ほどで水産仲卸売場棟に到着します。

バスで来場する場合

新橋駅より都営バス【市01】系統、東陽町駅からは都営バス【陽12-2】『水産仲卸棟』バス停で下車してください。

車で来場する場合

車でご来場の場合は、豊洲市場前交差点の「千客万来パーキング」がおすすめです。

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