ついに始まる『卸売市場法の改正』いったい何がどう変わるの?施行は2020年?改正の理由は?ポイントをおさらいしよう

ついに始まる『卸売市場法の改正』いったい何がどう変わるの?施行は2020年?改正の理由は?ポイントをおさらいしよう

日本の成長戦略を議論する「未来投資会議(議長:安倍晋三首相)」において議論が進められている『卸売市場法』の改正。

いったい何がどう改正されるのか?施行はいつからなのか?改正の理由や押さえておくべきポイント(とくに水産部門)を、鮮魚流通のプロが解説します。

目次

そもそも卸売市場法とは?

まず、卸売市場法とはいったいどんな法律なのでしょうか?仕組みと役割について解説します。

『生鮮食料品等』を扱う卸売市場の開設や取引に関する法律

卸売市場法とはその名のとおり、鮮魚、野菜・果物、肉類、花きなどの生鮮食料品等を卸売する卸売市場に関する法律です。

これら生鮮食料品等は、天候などの自然条件によって漁獲量や収穫量が大きく左右されます。さらに鮮度の劣化が非常に早く保存がきかないという性質も持っています。

そのため、消費者に対する安定かつ迅速な食料品の提供、生産者に対する確実で速やかな販路の提供、小売業者や飲食業者等に対する取引の場の提供が必要不可欠です。その流通拠点とするために卸売市場が開設されているのです。

よく言われている市場の機能として、下記のようなものが挙げられます。
■集荷・分荷機能:国内外の産地から大量多品目の生鮮食料品を集荷し、これらを組み合わせて少量多品目へと迅速・確実・効率的に分荷する機能
■価格形成機能:集積された需要情報をもとに、せりなどの方法により迅速かつ適正な評価による価格形成を行う機能
■決済機能:販売代金の迅速・確実な決済を行う機能

参考:東京都中央卸売市場ホームページhttp://www.shijou.metro.tokyo.jp/about/useful/

卸売市場は2種類に分けられる

卸売市場を開設するためには卸売市場法によって開設するための条件が制定されており、条件によって『中央卸売市場』と『地方卸売市場』に分類されます。

卸売市場には「開設者」と「卸売業者(市場内の卸売場でせり・相対取引などを行って仲卸業者等に販売する業者)」が必要です。

農林水産大臣の認可を受けて開設される『中央卸売市場』

中央卸売市場は農林水産大臣の認可を受けて地方公共団体(地方自治体)が「開設者」となって開設するものです。「卸売業者」は農林水産大臣の許可を得た法人に限定されています。

中央卸売市場は、取引に関して卸売業者や仲卸業者に対し以下のような厳しい規制があります。重要なポイントですのでしっかり頭に入れてください!

■卸売業者の販売先を市場内の仲卸業者、売買参加者に原則として限定する『第三者販売の原則禁止』
■卸売業者の販売を市場内にある物品に原則として限定する『商物一致の原則』
■仲卸業者の卸売行為の禁止、『直荷引きの原則禁止(仲卸業者は市場外で商品を仕入れてはならない)』

実例としては、卸売業者は市場外に店舗を構える小売店(鮮魚店など)に自由に卸売することができない、市場内に存在していない食品を販売することができない。

仲卸業者は卸売業者以外から商品を仕入れることができない(メーカーや産地等からの直接仕入れが禁止されている)といった具合です。

豊洲市場は日本最大の取引金額を誇る中央卸売市場

2018年に旧築地市場から移転して開設された豊洲市場は、東京都の中央卸売市場です。開設者は東京都、卸売業者は7社あります。

豊洲市場をはじめとして、力のある(荷物が多く集まる)中央卸売市場は、他の市場で取引するにあたって参考となる価格を形成する『建値市場』としての役割も果たしています。

各都道府県が認可・監督をする『地方卸売市場』

一方、地方卸売市場は地方公共団体(地方自治体)、協同組合、民間会社等が「開設者」となり、各都道府県知事の許可を受けて開設される卸売市場です。

地方卸売市場には卸売業者や仲卸業者に対する規制がゆるく、第三者販売や直荷引きなどに対する規制もありません。

なぜ市場法の改正が必要なのか?

では、なぜこの卸売市場法が改正されるようになるのでしょうか?

その理由を理解するためには、卸売市場法の成り立ちと現在の市場取引の現状を知っておく必要があります。

『中央卸売市場法』の成り立ち

現在の卸売市場法は、1923年(大正12年、なんと90年以上前!)に制定された『中央卸売市場法』に端を発し、骨格を維持しつつ1971年(昭和46年)に制定されたものです。

卸売市場は、卸売業者が生産物を集荷し、仲卸業者が分配し、せりを原則とした公正な価格形成を通じて、生鮮食料品等を消費者に円滑かつ安定的に供給するものとして長年機能してきました。

米騒動をきっかけとした食糧供給の統制のための法律だった

『中央卸売市場法』は1918年(大正7年)に起こった米騒動事件(米の流通量の減少や価格高騰で消費者が米を入手しづらくなることによって発生した暴動事件)をきっかけとして制定したといわれています。(諸説あり)

当時の内務省が食品流通の透明化、適切なを目的に市場制度の整備を行い、「セリ販売」「委託販売」「場内現物取引」などを原則とした法律が制定されたのです。

市場外流通の発達で卸売市場法が形骸化

しかし皆さんがご存知のように、近年の生鮮食品流通を取り巻く情勢は卸売市場法制定時とは大きく異なっています。

単身世帯、高齢者世帯、共働き世帯の増加によって中食、外食文化が大きく発達し、家庭で消費する加工食品の割合も年々増加しています。

そして、生鮮食品自体の消費の落ち込みに伴い、卸売市場経由率も年々減少しています。卸売市場数や卸売業者数も激減しているのが現状です。

そして現在でも第三者販売や直荷引きは例外的に行われており、市場法が形骸化し現状に即しているとは言い難い状況になっているのです。

これまで2度の大きな改正と今回の市場法改正の理由

実は市場法改正は今回が初めてではありません。あまり知られていないことですが、これまでにも時代の流れに合わせて何度か大きな変更があったのです。

本項では、市場内での取引方法に関してこれまでに大きく変更となった点を紹介します。

1999年(平成11年)せり入札原則の廃止

1999年(平成11年)には、これまでの市場法で制定されていた「せり取引」の原則がなくなり、新たに「相対取引(あいたいとりひき)」が導入されるようになりました。

相対取引とは、「1の卸売業者と1の卸売の相手方が個別に売買取引を行う方法」とされています。

せりを行わなくなったことによって、大手のスーパーマーケットや大手仲卸などは大量に商品を買うため卸売業者から安く買える、ということが可能になりました。

2004年(平成16年)の市場法改正(規制緩和)

2004年(平成16年)の市場法改正は1999年の改正よりもさらに抜本的で大きなものとなりました。

中でも大きかったのが卸売業者による第三者販売の原則(市場内の仲卸業者以外への販売)の弾力化、仲卸業者による直荷引きの原則(卸売業者を経由しない産地などからの直接仕入れ)の弾力化です。

3度目の市場法改正が2018年6月に衆議院で可決された

そして今回、2018年(平成30年)に3度目の市場法改正が衆議院で可決・成立しました。

豊洲市場の移転が全国的なニュースになった中、この市場法改正の話とともに『市場不要論』の議論がテレビやネット上で活発に議論されていたのを思い出します。

卸売市場法の改正内容は?実際にどのような影響がある?

では今回3度目の市場法改正で何がどう改正されるのか、それぞれの業者にはどのような影響があるのかを見ていきます。

市場の開設に関する法改正(規制緩和)

民間で中央卸売市場を開設することが可能になる

これまで農林水産大臣が認可し、都道府県または人口20万人以上の都市に限定されていた中央卸売市場の『開設者』ですが、今回の法改正によって許認可が緩和されます。

農林水産大臣が開設者を認定し、民間業者でも中央卸売市場の開設をすることができるようになります。

規制緩和により民間業者が卸売市場に参入することで、卸売市場の活性化、テコ入れを図るようです。

取引規制に関する法改正(規制緩和)

『第三者販売の禁止』の原則廃止

『第三者販売の禁止』の廃止により、卸売業者は市場内の仲卸業者や売買参加者以外に販売が可能になります。

これまで小規模の小売店や飲食店などは仲卸業者から仕入れることしかできませんでした。

今回の規制緩和により、仲卸業者を介さないいわゆる「中抜き」によって、より安価で食材を仕入れることができるようになる可能性があります。

『直荷引きの禁止』の原則廃止

『直荷引きの禁止』の廃止により、市場内の仲卸業者は全国各地の産地から直接仕入れることが可能となります。

これにより小規模の仲卸業者でも、中央卸売市場に普段は入荷しないようなニッチな食材だったり、高級な飲食店や海外のレストランなどが求める食材を小ロットで産地から仕入れて販売できる可能性があります。

『商物一致』から『商物分離』へ

『商物一致』の原則が廃止されれば、仲卸業者は顧客の小売店や飲食店などに産地から直接食材を配送することが可能となります。

より効率的な食材の輸送が可能になるうえ、より鮮度の良い状態で小売店や飲食店に食材が届くようになるかもしれません。

豊洲市場を例に挙げると、たとえば産地で水揚げされた鮮魚たちは産地(地方卸売市場)でせりにかけられ、豊洲市場に到着するのはその翌日です。

『商物一致』の原則が廃止されれば、もしかしたら産地で朝水揚げされた鮮魚が昼には東京の小売店に並ぶようになるかもしれません。

ただしスムーズに進むとは考えにくいかも

市場法改正によって上記のルールは原則廃止されるものの、『卸売市場の調整機能維持に十分配慮しつつ、卸売市場の活性化に資する視点に立ち、卸売市場ごとに、特定の事業者の優遇にならない』ように『市場毎に取引ルールとして定めることができる』としています。

さらに、『卸売業者、仲卸業者等の関係者の意見を聴くなど公正な手続を踏む』こととしています。規制緩和によって卸売業者と仲卸業者の意見の対立は避けられないのではないでしょうか。

法改正が行われても、市場内の取引形態や私たちの生活が急激に変わるとは考えにくいと思います。

新しい卸売市場法はいつから施行される?

新卸売市場法は2020年6月21日に施行される

新卸売市場法は2020年(令和2年)6月21日に施行されるそうです。大手スーパーマーケットや大手飲食チェーン店などがどのように動いてくるのが非常に興味深いですね。

まとめ

■今回の市場法改正の大きなポイントは『民間業者が中央卸売市場を開設可能に』『第三者販売禁止の廃止』『直荷引き禁止の廃止』『商物一致の原則廃止』

■卸売市場法はこれまで大きく2回改正されており、その度に時代に合わせて規制が緩和されてきた

■今回の卸売市場法の改正により、卸売業者や仲卸業者、売買参加者のこれまでの規制が緩和され、より生鮮食品の輸送効率化が期待できるかもしれない

■新しい卸売市場法の施行は2020年(令和2年)6月21日

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