市場にはおもしろい業界用語(魚河岸ことば)がたくさん!
豊洲市場はみなさんご存知のとおり、2018年10月に築地市場から移転してきました。築地市場は80年以上の歴史があり、その場所の特殊性から様々な文化が生まれました。実は築地市場の前は日本橋に魚市場があり、1923年の関東大震災で壊滅的な被害を受けたため築地に魚河岸が移転したのです。
そのため豊洲市場はその2つの市場の文化を色濃く受け継いでおり、市場の中だけでしか伝わらない、いわば業界用語がたくさん存在しています。江戸っ子文化という感じがして、最初聞いた時は面食らう言葉ばかりです。
魚河岸ことば:豊洲市場の特殊な単価の読み方
なぜ特殊な呼び方をするのか?
まずは単価の読み方です。魚は一尾ごとの重さが異なるため、基本的に1kgあたりの単価を伝えてから計りに乗せて重量を計り、一尾の価格が決まるようになります。
豊洲市場の仲卸の店舗で、これいくら?と尋ねると1kgあたりの単価を仲卸が教えてくれる、といった具合です。また、毎日たくさん買ってくれる常連のお客には単価を安くつけ、たまに立ち寄る程度で買う量も少ないお客には単価が高くつける傾向があります。そのため商品が並んでいるけれど値札がない、値段が気になったら従業員に聞いてみる、という仲卸店舗はけっこう多いものです。
こうした単価のやり取りは一日のうちに何十回と繰り返すことになるので、次第に単価の読み方も短く聞き取りやすいものに変化していったのでしょう。いちいち「これいくら?」「さんぜんにひゃくごじゅうえんだよ!」なんて言ってたら仕事にならなくなりそうですよね。
豊洲市場の単価の呼び方早見表
※人によって単価の呼び方は非常に異なりますので、あくまでもこれは一例です。
1100円 ピンピン
1200円 インニー ワンツー
1300円 イチサン ピンサン
1400円 イチヨン
1500円 イチゴー インゴー
1600円 イチロク インロク
1700円 インナナ
1800円 イッパチ
1900円 イッキュー
2000円 ニマル
2100円 ニーピン
2200円 ニーニー
2300円 ニーサン
2400円 ニーヨン
2500円 ニーゴー
2600円 ニロク
2700円 ニーナナ ニシチ
2800円 ニハチ ニッパチ
2900円 ニーキュー
3000円 サンマル
4000円 ヨンマル
5000円 ゴマル
6000円 ロクマル
7000円 ナナマル
8000円 ハチマル
11800円は「ピンピンパー」!?
11800円は「ピンピンパー」となります。豊洲市場では老若男女みんな真面目な顔してピンピンパー、ピンピンパー、って言ってます。(老若男女といってもおじさん・おじいさん率が高いんですけどね…)
でも、「いちまんせんはっぴゃくえん」というよりもずいぶん縮まっていますよね!すごく効率的で語感もよくて、筆者はピンピンパーが一番気に入っています。使う頻度はそんなに高くはありませんが。
何歳になっても『おねえさん』と呼ばれる謎の『帳場、帳箱』
帳場とは?
仲卸の店舗には「帳場」や「帳箱」と呼ばれる、お会計を行う場所があります。ここで実際に現金をやりとりするため、ミスがあってはいけない非常に重要なポジションです。
たとえばお客がお店にやってきて、1.2kgのキンメダイを1kgあたり2500円で買っていったとします。そうすると従業員が帳場に『キンメー、1.2キロー、ニーゴー!』と、魚種、単価、重量を口頭で伝えます。帳場では瞬時に納品書にその情報を書き、一尾あたりの価格を計算するのです。
帳場の中にいる女性は全員『おねえさん』
帳場にいるのはたいてい女性です。能力的なところで、男性よりも女性のほうが向いている傾向がある仕事なのでしょう。そして帳場にいる女性は全員『おねえさん』と呼ばれるのです。
(残念ながらほとんどいないのですが)20代でも30代でももちろんおねえさんです。40代でも50代でもおねえさん。60代でも70代でも80代でもおねえさんと呼ばれる不思議。おそらく大多数がほんとうにおねえさんだった時代があったんでしょうね…。
おもしろい市場用語を動画でも紹介しています
豊洲市場で実際に使われているこれらの用語を、私たちのYouTubeチャンネル『さかなでのみましょう』でも紹介しています。動画がおもしろいと思ってくれた方、豊洲市場に行ってみたいと持った方は、ぜひチャンネル登録、グッドボタン、高評価をよろしくお願いいたします!