魅力的な高級魚が水揚げされる奄美大島
アマミブルーと称される美しい海、希少な自然と生き物たち、南の島のリゾート、といったイメージがある奄美大島(あまみおおしま)。
奄美大島は九州のはるか南方の海上、鹿児島県と沖縄県の中間に位置する島です。
そんな奄美大島ですが、実は首都圏では高級魚として扱われる魚が多く水揚げされる場所ということをご存知ですか?
後ほど詳しく紹介しますが、奄美大島で水揚げされるハマダイやアオダイなどは、豊洲市場など東京の市場では高値がつく美味しい高級魚として、お寿司屋さんをはじめとする飲食店から非常に人気のある魚です。
さらに奄美大島には、全国でも数少ない徹底した鮮度保持のこだわりを持つ漁業協同組合があります。それが今回ご紹介する『奄美漁業協同組合(以下、奄美漁協)』さんです。
めだか水産YouTubeチャンネルでもこれまでに2度、奄美漁協さんからご提供いただいた魅力的な魚を紹介して参りました。
奄美漁協さんから食材をご提供いただいた動画第一弾
奄美漁協さんから食材をご提供いただいた動画第二弾
動画内でもご紹介しましたが、奄美漁協さんの魚は適切な処置により驚くほどの高鮮度で東京まで届けることができます。
本記事では、動画で伝えきれなかった奄美漁協さんの鮮度保持に対するこだわりや工夫をさらに深堀りしていきます。
奄美大島で水揚げされる魅力的な魚たち
まずは奄美大島で漁獲・水揚げされる素晴らしい魚たちをご紹介します。
いずれも関東の市場や、奄美漁協さんの卸先である沖縄県の小売店や飲食店では非常に高評価を受けています。
ハマダイ(アカマチ、オナガダイ)
めだか水産の動画でもご紹介したハマダイは、奄美ではアカマツ、豊洲市場など関東の市場ではオナガダイと呼ばれ高値で取引されています。
透明感のある美しい白身魚で、癖がなく旨味があり、お刺身でも加熱しても美味しく食べることができます。
豊洲市場には500gくらい~5kgくらいまで様々なサイズのハマダイが入荷しますが、一般的に大きいサイズのものほど脂がのり美味しい傾向にあります。
味がよく入荷数が多くないため高値がつき、なかなか一般にお目にかかることはありません。
奄美漁協さんでは三大高級魚のひとつに位置づけられている、非常に重要な魚です。
スマガツオ
カツオと聞いて思い浮かべる魚とは少し異なる、『幻のカツオ』ともいわれているのがスマガツオです。
スマガツオは幻ともいわれるようにカツオと比べて漁獲量が少なく、それでいて非常に味が良いことが特徴。
カツオ独特の酸味のある味わいがありながらも、マグロに近いような濃く美しい赤色、深い旨味があります。
その美味しさから最近では養殖に取り組む地域もあります。こちらも一般にはあまり出回らないため知名度が低いのですが、知る人ぞ知る魚といえます。
アオダイ
アオダイはその名のとおり淡い青色をした魚です。お刺身、焼き物、煮付けなど料理を選ばず非常に美味しい魚として、沖縄県、鹿児島県など九州の一部、そして関東の市場では高級魚として高値で取引されています。
東京の豊洲市場ではアオダイを仕入れるのはもっぱらお寿司屋さんや居酒屋さんなどの飲食店です。お刺身にしたときに身の色も血合いの鮮やかさも美しいことから人気で、まさに上質な白身魚といえます。
その他、奄美漁協さんに水揚げされる魚たち
奄美漁協さんでは漁師さんによって一本釣り漁、潜水漁、刺網漁で漁獲された魚が水揚げされます。
一本釣り漁法ではご紹介したハマダイ、スマガツオ、アオダイのほか、キビレアカレンコ、ホシレンコ、ヒメダイ、オオヒメダイ、チカメキントキ、カンパチなど、とてもバラエティ豊かな魚たちが水揚げされます。
奄美漁協さんに水揚げされる魚ギャラリー
潜水漁ではブダイ類、マハタ、ユカタハタ、ルリハタ、スジアラなど高級魚として有名な魚が水揚げされます。
とくに潜水漁で漁獲されるシロクラベラという7~8kgにもなる大型の魚は、ほかのベラ類とは一線を画す品質とのこと。関東ではまったく入荷することのない幻の魚です。
鮮度保持向上への取り組み
奄美漁協さんのすごいところは、単に数多くの高級魚種が集まることだけではありません。これらの魅力的な魚たちをより鮮度よく、より衛生的に、より価値がつくように続けている取り組みを紹介します。
一本釣り漁師による漁獲直後に船上での活け締め、血抜き
一本釣り漁法で漁獲された魚は、鮮度保持のため釣りあげたら直ちに船上でエラの付け根を切り、海水を流し血抜きをする『船上活け締め処理』を施します。
魚は水揚げされ生命を絶つとイノシン酸などの旨味成分が形成され始めるのですが、それと同時に鮮度の劣化が始まります。
適切な方法で血抜きと冷やしこみを行うことで鮮度劣化を抑えることができ、食卓や飲食店など消費者の手元に届くときに旨味が最高潮に達するのです。
奄美漁協さんでは一本釣りで水揚げされる魚の処理にルールを設け、すべて船上で活け締めされた魚のみを扱うようになっています。
高鮮度を保つ「ウルトラファインバブル水」処理
水揚げされた魚は、紫外線発生装置で滅菌し、さらにウルトラファインバブルで処理した氷水で冷やしこみが行われます。
ウルトラファインバブルとは、超微細な窒素ガスが溶けた水のこと。魚の体内の好気性細菌の繁殖や筋肉や血液の酸化を抑制することで、より鮮度を長期間持続させる効果があるとされている最先端の技術です。
こうした地道な鮮度保持の努力が、奄美漁協さんの素晴らしい魚をつくっています。
より衛生的な市場に。「優良衛生品質管理市場」の認定
さらに奄美漁協さんでは、衛生管理に優れた産地市場である「優良衛生品質管理市場」の認定を取得しています。
鮮度の良い魚を適切に処理し、市場を衛生的に保つ工夫から、奄美漁協さんでは魚市場特有のにおいを感じないといいます。
奄美鮮魚 笠利産ブランドを創り、育てる
奄美漁協さんでは20年ほど前から「量」を優先する漁業から「質」を優先するように変化していきました。その結果、全国的に評価される高品質な魚を出荷する「奄美鮮魚 笠利産」ブランドが生まれました。
海からの恵みである素晴らしい魚をより鮮度よく、より衛生的に、美味しく。魚とともに想いを伝えたい。そんな奄美漁協さんの意思が感じられます。
現在は地元消費のほか沖縄県や鹿児島県など一部の地域にだけ出荷しているそうですが、ぜひ全国の皆さんにも奄美漁協さんの素晴らしい魚を知ってほしいと感じます。
奄美漁協さんをもっと知りたい、魚を仕入れたいと感じていただけた方は、是非下のリンクより奄美漁協さんのWebサイトをご覧ください。
取材協力:奄美漁業協同組合
参事 原永様
※役職は2021年4月取材当時のもの