水産業の現状と課題・問題点って?世界では成長産業、日本では衰退産業…なぜ?

水産業の現状と課題・問題点って?世界では成長産業、日本では衰退産業…なぜ?

最近、魚を食べましたか?この記事を読んでくださる方は少なからず水産業に興味がある方かと思います。

私は水産系の大学を卒業し、新卒から約10年間、水産業界の様々な仕事に携わって参りました。その中で感じた水産業界の問題点、課題点を挙げます。

水産業は世界では成長産業!なんと過去30年で生産量が2倍以上に

なんと、世界の漁業・養殖業を合わせた生産量は増加し続けています。2017年(平成29年)の世界の漁業・養殖業生産量は2億559万トンだそうです。途方もない数字です。

しかし、30年前の1987年あたりを見ると1億トン程度なんです。この30年で世界では生産量が2倍以上に増え、その後も増加し続けています。そのうえここ数年の伸びは養殖業がとくに顕著です。一方、日本はというと…?

日本の漁業生産量はなんと30年で三分の一に

世界で漁業が伸び続けているのに対して、日本の漁業・養殖業生産量は1984年(昭和59年)の1,282万トンをピークに減少を続け、2017年(平成29年)には431万トンになってしまいました。

実にピーク時の1/3です。こんなに衰退しているにも関わらず、世間の関心や問題意識が意外と薄いような気がします。それは私たち水産業界に携わる人間の課題でもあるでしょう。

実は日本は世界第一位の水産業大国だった

日本は1972年(昭和47年)から1984年(昭和59年)の間、世界一の漁獲量を誇る水産業大国でした。1977年(昭和52年)に排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone、)が設定されることにより、外国の海の200海里(約370km)の中で自由に漁獲ができなくなりました。日本はそれまで漁獲していた世界中の漁場から追い出される形になったのです。

それまで主流だった日本の遠洋漁業が衰退し、さらに世界中の魚介類需要が増加し争奪戦が始まった結果、日本は他国に買い負け(輸入業者が価格の上昇についていけず他国に買われてしまう)するようになっていきます。

加えて日本の排他的経済水域内(200海里内)で年々魚が獲れなくなってきたこと、漁師の高齢化や後継者不足、魚離れなどの理由から、日本の水産業が衰退していったといわれています。

大きな課題『魚離れ』とは一体何なのか?

日本の消費者一人当たりの魚介類消費量推移

2018年(平成30年)版水産白書より、主要国・地域の1人1年当たり食用魚介類消費量の推移(粗食料ベース)を見てみると、世界の主要国は一人当たりの魚の消費量が増えているのに対し、減少しているのはまさかの日本だけなのです。

『魚離れ』の要因

魚離れの原因は昔からよく言われているいくつかのポイントがあります。『調理が面倒』『ゴミが出る』『ボリュームが少ない』などです。

魚を食べたいけれど単純に高い…

それに加えて、私は『単純に高い』ことも大きな要因になっていると思います。最近ではコンビニでサラダチキンのような『サラダフィッシュ』が販売されるようになり、ひそかに脚光を浴びています。

サラダフィッシュの記事一覧はこちら→https://medakasuisan.com/category/salad-fish/

サラダフィッシュはたしかに美味しくて健康的なイメージもあって積極的に食べたいのですが、サラダチキンと比べると100gあたりで考えて2~3倍の価格です。これじゃどう考えても離れますよね。食べたいけれど消費者が手を出せない。現状はどちらかというと『魚の日本人離れ』でしょう。

水産流通から見た水産業の課題

水産流通に携わる人たちの意識改革の遅れ

筆者は日ごろ魚市場に出没しており、卸売業者や仲卸業者の方々と話をする機会が多いのですが、残念ながら魚市場に努めている方で水産業に対する課題意識を持っている人はそこまで多くないのが現状です。

一部にはもちろん強い課題意識を持っており、積極的に働きかけている方もいらっしゃいますが、市場全体で課題解決に動いているケースは多くないように見受けられます。

水産流通にはまだまだ保守的な人たちが多い

魚市場は実はかなり閉ざされた空間で、あまり新しい考え方が入ってこない場所です。加えて市場の同業他社はライバルでありつつ、市場という共同体を築く仲間でもあるという意識もあるため外部の新しい意見を取り入れるのが難しかったりするのです。

市場には「HACCPってなに?MSC認証?MEL?そんなの知らないなぁ。」って人が多いです。むしろ市場に限らず水産業界全体がそういう意識のような気がします。
※MSC認証:Marine Stewardship Council、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物に与えられる認証エコラベル。持続可能な水産物の認証プログラムとして最も有名です。

しかし外資系ホテルや外国人シェフを顧客に持っている豊洲市場の仲卸業者の社長さんは、「MSCでないとお客さんが買ってくれない!むしろMSC認証なら3割高で買ってくれるんだよ!」と力説していました。

水産ベンチャー企業には資源管理・保護の意識が根付くかも?

一方で、水産業界に課題や問題意識をもったベンチャー企業がここ数年でいくつか誕生しています。外部の業界から水産業に関わってくる方が増えることにより、新しい考え方を業界内や消費者に伝えていくことが期待できます。

水産ベンチャー企業による本マグロ炎上事件

ある水産ベンチャー企業の小売店(魚屋さん)がネット上で炎上しました。産卵期の天然クロマグロ(本マグロ)の安売りから始まる産地偽装疑惑などで、大きな注目を集めました。おそらく店舗で販売している人もバイヤーも昔から水産業界にいた方だったのではないでしょうか。

この事件の内容や是非については述べませんが、以降、同社は産卵期のクロマグロの取り扱いを全面中止しています。同社の資源管理に対する課題意識も大きく変わったような印象があります。

水産流通を改革する企業や人材が少ない

巻網による産卵期のクロマグロ大量漁獲は、日本の水産資源に大きな現在大きな批判の対象になっています。TwitteやFacebookなどで一部の方が声を上げ続けてきた結果です。

水産を変えたければベンチャーは大いにアリ

前項で述べた炎上事件のように、水産流通の業界に古くから携わっている人でも課題意識を持っていない(というか知らない)人が多いのが現状です。ベンチャーならではの発信力や、外部の業界から来たことによる新鮮な問題提起というのは水産業界全体に有意義な影響を与えてくれると思います。

結局のところは水産業界がどうとか日本が誇る魚食文化だとか自給率とか資源保護とか難しいことは考えずに、次の世代に美味しい魚を残していけるよう各事業者が課題意識を持つことが重要だと思います!

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