メダカの飼育・繁殖で一番難しい『針子』
メダカの飼育で最も難しいのは針子(メダカの稚魚)を大きく育てるところです。
むしろ針子の飼育に成功すれば、メダカの飼育の基本的なことは理解できていると言っても良いと思います。
この記事では難しい針子の育て方の解説と、針子が死んでしまう原因と対策をご紹介いたします。
針子の死因は餓死が最も多いって知ってましたか?針子がどうしてもすぐ死んでしまうといった方に向けてうまく育てるヒントがありますので、ぜひご覧ください。
針子ってなに?なぜ針子と呼ぶの?
針子とは生後0日~2週間程度のメダカの稚魚のことを指します。生まれたてのメダカは、文字どおり針のように細く小さい姿をしているため針子と呼ばれています。
メダカだけではなく多くの魚が、生まれたばかりの姿はこのように針のように透明で弱々しい姿です。実際に泳ぐ力も非常に弱く、水流にも抗えないほどです。
メダカの針子は一緒に飼育する生き物にも注意する必要があります。大人のメダカや肉食性・雑食性のエビなどと一緒の容器に入れていると、いつの間にか食べられてしまいます。
この姿を見たら、いくら親子とは言え一緒にすると親メダカに食べられてしまったり、エビに襲われるというというのも理解できますよね。
メダカの針子の育て方
それでは本題の、メダカの針子の育て方を紹介していきます。
もちろんこれから紹介する方法が正解というわけではなく、ぜひいろいろな方法を試して自分の飼育環境に合ったものを選んでいただくのが良いでしょう。
それから頭に入れておきたいのは、孵化した針子を100%の確率ですべて大人メダカへ育てることは不可能です。遺伝的にもともと虚弱だったり餌を摂ることが出来ない個体も存在するので、生存率を上げることに重点をおきましょう。
メダカの針子の飼育で必要なもの
メダカの卵から針子が孵化したら、まず用意していただきたい最低限のものを紹介いたします。
用意するのに時間がかかることもあるかもしれませんので、針子が孵化してからではなくメダカの繁殖にチャレンジしようと思ったときに用意していただくことをおすすめします。
容器
水槽でも構いませんが、針子は非常に小さいので小さなプラケースでも飼育することが可能です。
ご家庭であればおすすめは3リットル程度のプラケースです。掃除や持ち運びがしやすく、観察もしやすいため、メダカの針子の飼育には適しています。
タッパーなどあまりに狭い容器だと水質の変化が大きく、生存率が下がる場合があります。
餌
稚魚に与える餌は人工飼料と生き餌に分けられます。どちらを使うかは一長一短です。
人工飼料(粉餌)
メダカの針子に与える餌は、大人メダカと同じものでも構いません。しかしそのままでは大きすぎて針子の口には入りませんので、細かくすりつぶしてあげる必要があります。
ではどのくらい細かくすりつぶせば良いかというと、「粉くらい」といえば良いでしょうか。とにかく細かく、空気に漂うくらいのサイズでないと針子は食べることができません。
餌の回数と量は「なるべく少量」で、「なるべくこまめに」与えましょう。といっても初めて飼う方にはわからないと思いますので、1回に与える量は「餌の容器につまようじを入れて、先端に付いた分程度」で、回数は「1日最低3~5回」とするのが良いでしょう。
メダカの針子にとっては常に新鮮な餌が目の前にある状況が望ましいです。餌の回数は、水の汚れを考えなければ回数が多いほど良いです。
そして、大人メダカのように沈んだ餌を食べることはできません。浮かんだものしか食べられず、一度沈んだ餌は食べ残しとなり水質悪化の原因となります。
生き餌(ゾウリムシ)
針子に与える生き餌は、大人メダカに与えるミジンコやブラインシュリンプのような肉眼で容易に確認できるものではなく、ゾウリムシという肉眼で確認することが困難なくらい小さな微生物などです。(クロレラという植物プランクトンを用いる場合もあります)
観賞魚の世界ではゾウリムシやワムシなどの微生物を総称してインフゾリアと呼ぶこともあります。
ゾウリムシは増殖方法が広まったおかげか、現在ではメダカ針子飼育の定番になりつつあります。ただしニオイがきついので(簡単に言えばドブのニオイです)我が家ではゾウリムシは使っていません
。
スポイト(あれば)
メダカの針子は遊泳力が強くないため、基本的に浮かんでいることしかできません。大人メダカのように底に沈んだ餌を食べることはできませんので、食べ残した餌はすべて沈んで汚れになってしまいます。
そのためスポイトがあれば残り餌を吸い取って排出することができ、水質悪化を防ぐことができます。スポイトを使うときには誤って針子を吸い込んでしまわないように注意しましょう。
めだか水産がおすすめするスポイトは「ジェックス メダカ元気 スポイト」です。地味な器具ですが非常に活躍します。スポイトの紹介はこちらの記事をご覧ください。
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孵化するまで(卵の状態)は水道水でOK
メダカの卵を見つけたら、用意しておいた容器に水道水を入れ、常温になったら卵を入れておきます。
メダカの卵は殻によって殻の外の水と隔離されています。そのため卵の状態であればカルキを抜いた水でなくてもOKです。
我が家では水カビ防止のためにもカルキは抜かず水道水をそのまま入れています。
親メダカとは別の容器で育てる
親メダカや他の大人メダカとは必ず飼育容器を分けてください。針子は大きなメダカに見つかったらすぐに食べられてしまいます。
また、ヤマトヌマエビやスジエビなどのエビと一緒にするのは避けましょう。大きなメダカは泳いで逃げることができても、針子は逃げられず食べられてしまいます。(経験上ミナミヌマエビやレッドチェリーシュリンプは針子と一緒に飼育しても大丈夫でした。)
夏場以外はヒーターを使うのも手
針子は水温が高いほど成長が早くなります。そのため室内飼育であれば夏場以外はヒーターを使うのも手です。といっても35℃を超えるような高水温は危険ですが。
最近ではヤフオクなどで珍しい品種のメダカの卵が通年販売されていますが、冬場でもヒーターを使えばメダカの針子は飼育できます。
春に卵を買って、ヒーターを使って育てれば夏までに繁殖可能な大きさに育てることも十分可能です。
我が家では小さめのメダカを飼育している水槽内にペットボトルを切ったものを入れて、そこで針子を育てています。(ペットボトル内の水はグリーンウォーターです)
針子の育て方で失敗しやすい原因とポイント
針子の死因は餓死(餌不足)が多い
大人のメダカが死んでしまうのは水質悪化が原因であることが多いですが、針子のメダカが死んでしまったり飼育に失敗してしまう原因は実は餌不足のことが多いです。
意外に思われるかもしれませんが、餌の大きさが針子の口に合わなかったり、餌の頻度が少なかったりして飼育に失敗してしまうケースは非常に多いです。
大人メダカは極端に言えば2~3日餌がなくても生きていくことができますが、針子はそうはいきません。
こまめに様子を観察して、お腹が膨らんでいること、頻繁に餌をついばんでいることを確認しましょう。針子の周りに常に餌がある状態が望ましいです。
水質にも要注意。特に食べ残した餌は大敵
針子の死因は餌不足のことが多いですが、餌不足を解消しようとして起こってしまうのが残り餌による水質の悪化です。
水質が悪化すると毎日1匹、また1匹と針子が姿を消していきます。大人メダカの死骸は気付きやすいですが、針子が死んでしまっても気づきにくいものです。
たくさんいた針子がいつの間にか少なくなったような…?と思ったら水質悪化を疑いましょう。針子の容器を水替えするときにはスポイトが便利です。
おすすめのスポイトの紹介はこちらの記事をご覧ください。
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メダカの針子が大きくならないときは容器の広さを確認
メダカの針子が大きくならない原因はいろいろ考えられますが、一つありがちなのが容器の大きさです。
メダカは成魚の場合でも同様ですが、基本的に容器が大きいと早く成長し、容器が小さいと成長が遅くなります。おそらく環境に合わせて小さい容器で体を大きくしすぎないためと思われます。
メダカ同士が衝突しやすい環境下では体サイズの成長が抑制されるのではないでしょうか。
では単純に容器を大きくすれば良いかというとそういうわけではありません。
メダカの針子はほとんどの時間を水面から1~2cmの表層で泳いでいます。そのため容器を深くしてもあまり効果がありません。早く成長させたい場合は、容器の表面積を広くすることが重要です。
よくある疑問
水替えはしたほうがいい?→基本的にしなくても大丈夫
水質の急激な変化を避けるのと水流を避けるため、メダカの針子が大きくなる2週間まで程度は水替えは不要です。
というよりも水替えはしないほうが無難です。残り餌を取り除いたり、表面に浮かんだ油膜を取り除く程度にとどめておきましょう。
水替えを避ける理由は主に3つあります。
1つ目は水質の急激な変化を避けることです。ここでいう水質とはpHや水温、ろ過バクテリアの減少などです。メダカの針子はヒレが未発達で泳ぎが下手なだけでなく、体内の調節機能を司る臓器も未発達です。
そのため水質の急激な変化は針子に大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
2つ目は水流を与えないようにするためです。針子はわずかな水流にも抵抗する力がありません。水替え時の水流でも体力を消費してしまう場合があります。
もしあまりにも水質が悪化しているようなら、なるべく水流を起こさないように静かに水替えしましょう。また、水温をしっかり合わせてから水替えするようにしてください。
3つ目は餌の問題です。生まれたばかりのメダカの針子たちは、人間たちが与える粉餌やゾウリムシなどの生き餌だけでなく、水槽内に自然発生する極小サイズのプランクトンやバクテリアなどを食べています。
そのため、あまりにキレイすぎる水槽ではうまく育たなかったりすることもあるのです。針子の主な死因は餌の不足による餓死です。多少汚れている(ように見える)容器のほうが、針子の生存率が高かったりします。
人工飼料とゾウリムシ、針子を育てるにはどっちがいいの?
メダカの針子は、人工飼料とゾウリムシでは明らかにゾウリムシのほうが食いつきがよく成長も早くなります。
ただし増殖するのに手間がかかったり、独特のニオイがあるなど、特に室内飼育の方にとってはハードルが高いかもしれません。
前述しましたが我が家では人工飼料のみでメダカを針子から大人まで飼育しています。飼育する方の飼育スタイルに合わせて人工飼料やゾウリムシを使い分けるのが良いでしょう。
ゾウリムシはメダカ愛好家の方々が育てているものを分けてもらったり、メルカリなどのフリマアプリでも手軽に入手できます。自宅で増やすのは手間がかかりますがそこまで難しいものではありません。
餌は何日目から与えるの?→孵化後2~3日目から
生まれたばかりの針子は餌をすぐに食べることができず、お腹の中の栄養でしばらく過ごします。そのため孵化してから2~3日経過してから餌を与えるようにしましょう。
先にも述べましたが、針子は非常に小さく餌を食べる量もすごく少ないです。1回に与える量は「餌の容器につまようじを入れて、先端に付いた分程度」で、餌の回数は「1日3~5回」とするのが良いでしょう。
針子の死因に餓死が多いといっても、餌を与えすぎて水質が悪化してしまうのも死因になりますので注意しましょう。
メダカの繁殖は楽しい!うまく育てて次世代につなげよう
針子の飼育はメダカの繁殖で最も難しい工程ですが、同時にどんな子が育つかを日々楽しめる工程でもあります。うまく育ててあげて、メダカライフを存分に楽しみましょう。