近年、深海魚の人気が高まっています。静岡県沼津の『沼津港深海水族館』が大人気だったり、上野の国立科学博物館で『深海展』が開かれたりなど、じわじわとその人気を広げているのがわかります。
でも、なかなか見に行きたくても場所によっては見に行けないですよね。そこで今回おさかなのプロ『日本さかな検定1級』のめだか水産広報部が、スーパーでも売っているような身近な深海魚を紹介します。
「えっ、普段食べてるこの魚も深海魚だったの!?」と驚くこと間違いなしです!
そもそも深海魚って?
深海魚のイメージ
皆さん『深海魚』と聞くとどんなイメージをもつでしょうか?目が異様に大きくて口が大きく、歯が鋭い…そんなグロテスクな姿を思い浮かべたのではないでしょうか?
しかしそれは深海魚の中でもごく一部。ふつうの魚の姿をした、身近で食用として食べられている魚も深海魚であることが多いんですよ。
深海魚に明確な定義はない
深海とはその名のとおり海の深い層を表しますが、ここからが深海!という明確な定義はありません。一般的にはおおむね水深200m以上を深海と呼ぶことが多いです。
水深200m以上の海に生息する魚を深海魚と呼ぶとすれば間違いないと思います。
意外と身近な魚が深海魚だったりする
日本人は実に様々な魚種を普段から食べています。そんな日本人が求める魚を世界中の海で漁獲してくるわけですが、日本の大型底引き網は水深50mからなんと水深1000mまで網を仕掛けて魚を獲るそうです。
底引き網には様々な深海魚が掛かっており、それが皆さんの食卓にのぼるのですね。ということで、食卓にのぼる身近な深海魚を紹介していきます。
キンメダイ
学名:Beryx splendens
英名:Splendid alfonsino
分類:キンメダイ目キンメダイ科キンメダイ属
身近な深海魚の代表
キンメダイは身近な深海魚の代表とも言えるのではないでしょうか?煮付けなどが美味しい高級魚としても非常に有名です。
キンメダイは水深200m~800mの深海に生息しているれっきとした食用の深海魚です。その名のとおり金色の大きな目から名前が付けられました。
タイの仲間ではない
金目鯛という名前がついていますが、タイ(マダイ)の仲間ではありません。タイ(マダイ)はスズキ目タイ科に分類されますが、キンメダイはキンメダイ目キンメダイ科。分類上はタイにはほど遠い仲間です。
キンメダイのように、タイの仲間ではないのにタイという名前がつく魚を『あやかり鯛』といいます。高級魚のイメージが強いタイの名前を借りることで価値が高そうに感じるんですね。
しかし今ではキンメダイのほうがマダイよりも高いことのほうが多いのですが…。
キンキ(キチジ)
学名:Sebastolobus macrochir
英名:Broadbanded thornyhead
分類:カサゴ目フサカサゴ科キチジ属
正式名称はキチジ
キンキの正式名称(標準和名)はキチジといいます。標準和名のキチジよりも通称であるキンキのほうが一般にはよく知られていますよね。
北日本の超高級魚
日本で最も高値をつける魚はいくつかの種類がいるのですが、そのひとつがこのキンキ(キチジ)です。北日本の超高級魚の代表で、西日本の高級魚はノドグロ(アカムツ)ですね。
経験上ですが、最も高いときには1kgあたり2万円くらいになっていた記憶があります。1尾300gくらいとすると、なんと1尾6000円!!まさに超高級魚です。昔はかまぼこやちくわの原料になっていたということですから驚きですね。
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キンキも深海魚
そんな高級魚キンキも立派な深海魚です。たしかに目が大きい、食べると身がやわらかい、脂が多い、といった特徴があってまさに深海魚っぽいですね。
キンキはエリアにもよりますが主に水深150mから1500mの深海に生息しているようです。生息密度が高いのは350m~1000mとされています。
タラ(マダラ)
学名:Gadus macrocephalus
英名:Pacific cod
分類:タラ目タラ科マダラ属
非常に重要な水産資源
マダラは浅い海から水深800mくらいまでの深海に広く生息する魚です。日本では三陸や北海道が主な産地になっています。
マダラは実に様々な身近な食べ物として登場します。身は例えばかまぼこ、ちくわ、給食のフライ、保存食の棒鱈(ぼうだら)など。
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精巣は冬の高級食材の白子(しらこ)。胃袋は韓国料理の「チャンジャ」に使われています。利用範囲の非常に広い重要な食材なんですね。
メダイ
学名:Hyperoglyphe japonica
英名:Japanese butterfish
分類:スズキ目イボダイ科メダイ属
近年人気上昇の深海魚
メダイは水深100m~500mに生息する魚です。とにかく大きな目とぬぼっとした姿がなんともいえません。
メダイは脂のりがよく身がやわらかい、味も美味しい魚で、英名のButterfishというのがぴったりですね。近年その美味しさから人気が急上昇しています。
西京漬けや塩焼きなどにするとたんぱくな白身なのにこってりと脂がのっていて非常に美味しいです。人気に伴って値段も上昇しています。
アンコウ(キアンコウ)
学名:Lophius litulon
英名:Goosefish
分類:アンコウ目アンコウ科アンコウ属
身近だけどグロテスク
冬になるとアンコウ鍋やあん肝(アンコウの肝)などが居酒屋さんに並びますよね。口にしたことのある方は多いと思いますが、丸のままの姿を見た人は少ないのではないでしょうか?
このとおり「まさに深海魚!」という姿。非常に大きな口、平べったくてぶよぶよの体。姿を見ると食べられるのか疑問に思いますね…。
身近で食用にするアンコウは2種類
日本で主に食用とされるアンコウは「キアンコウ」と「アンコウ」の2種類です。キアンコウは水深30m~500mに生息する深海魚です。
ですが冬になると水深20mくらいのところまで上がってくるようで、漁獲されるのは主に数十メートルのことが多いようです。
深海のアンコウというとチョウチンアンコウを思い浮かべるかもしれませんが、チョウチンアンコウは食用にすることはありません。
身近にも深海魚はたくさんいる
身近な深海魚の例をあげてみましたがいかがでしたでしょうか?日本は非常にたくさんの種類の魚が獲れ、いろいろな食べ方で利用してきました。
紹介した魚以外にも、食べた魚を調べてみたら意外に深海魚だった、ということがあるかもしれません!TVやSNSなどで紹介されるような派手な深海魚だけでなく、身近で食べている魚にも深海魚がいるんだ!と思っていただければ、よりおもしろいおさかなの世界が広がりますよ。