『完全養殖のうなぎ』っていつになったら出回るの?そもそも完全養殖ってなんなのさ?難しい理由って?

『完全養殖のうなぎ』っていつになったら出回るの?そもそも完全養殖ってなんなのさ?難しい理由って?

うなぎは最も完全養殖が待たれている魚のひとつ

ニホンウナギ
ニホンウナギ

皆さんが大好きなうなぎは、今もっとも完全養殖が待たれている魚のひとつです。2010年に大きなニュースになったのが、水産総合研究センターによる『世界初の完全養殖のうなぎ』を誕生させたことです。しかしそれから約10年経った今でも、まだまだスーパーでは完全養殖のうなぎが並ぶということはありません。それはなぜなのでしょうか。

そもそも完全養殖って何?

うなぎは天然のシラスウナギ(うなぎの稚魚)を河口域で捕まえて、養殖するためのいけすに入れ、餌を与えて大きく育てる方法をとっています。これを『畜養(ちくよう)』といいます。そのためシラスウナギが獲れないとうなぎを生産することができない状態です。うなぎの養殖は天然の資源(稚魚)に依存してしまっているのです。

これを解決するための方法が完全養殖です。完全養殖とは人工的に孵化させたうなぎを親のサイズまで育て成熟させ、産卵させて二世代のうなぎを人工的に育てることのできるライフサイクルを作ることを指しています。

完全養殖には高度な研究が必要不可欠

完全養殖は産卵→孵化→稚魚の育成→親魚の育成→成熟→産卵、という魚の成長段階のすべてを人工的に行うためその魚がどのように成長したり成熟したりなどの生物学的知見や長きにわたる研究が必要な、非常に高度な養殖方法なのです。

うなぎの稚魚であるシラスウナギはこれまで人工的に生産することができませんでした。何しろうなぎはどのように生まれるのか、産卵場所はどこなのか、孵化してから何を食べて成長しているのかがこれまでほとんどわからなかったのです。これがうなぎの完全養殖で困難だったポイントのひとつのようです。

魚で一番難しいのは稚魚期

魚を飼育したことがある方は分かるかと思いますが、魚を育てる上で最も難しいのは稚魚の育成だと思います(もちろん魚種にもよりますが)。親とは大きさや違うため食べる餌も異なり、人工飼料などは食べない個体も多いのです。魚は臓器やヒレが形成される稚魚が最も生産が難しい段階なのです。

メダカの卵とメダカの稚魚
メダカも稚魚期が一番難しい

日本国内で生産されているマダイやコイ、トラフグやギンザケ、クルマエビなどは完全養殖されています。一方、うなぎやマグロ(クロマグロ)は天然の稚魚を海や川などから取って育てています。

養殖のイメージが強いブリ(ハマチ)は意外なことに完全養殖されていません。モジャコという数cmの稚魚を4月~5月の春の海で採取して商品サイズまで畜養するというのが商業用の養殖ブリの100%全てを占めています。

完全養殖のメリット

完全養殖には大きなメリットがあります。最も大きなメリットは天然資源を圧迫しないこと、それによりうなぎを安定供給できることでしょう。日本国内におけるうなぎの供給量は2000年に約15万トンありましたが、2017年には約5万トンまで落ち込んでいます。これはヨーロッパウナギAnguillaanguillaのワシントン条約による輸出規制や、シラスウナギの不漁による養殖量の減少が要因にありそうです。完全養殖が実現することでシラスウナギの漁獲量に左右されずにうなぎを生産することができるかもしれません。

また完全養殖が実現すれば、成長が早く、肉質(味)がよく、病気にかかりにくい、そんな高品質なうなぎを生産することができるかもしれません。実際にマダイやサーモンでは優秀な形質をもった親を交配させ子孫を残していくことにより成長が早く色が良くおいしい、付加価値のついた魚を生産することに成功しています。

市場で鮮魚の流通の仕事をしていると、養殖魚のありがたさがわかります。マダイやクルマエビなどの高級魚が活きたまま運ばれてきて、高鮮度のまま食卓や飲食店に提供されていく。これが天然資源を圧迫しない完全養殖なら素晴らしいことだと思います。(もちろん養殖にも海の汚染や餌となる天然資源の圧迫などたくさんの課題がありますが。)

うなぎの漁獲量が減っている理由には諸説ありますが(そもそも減っていないという説も)、シラスウナギの違法操業で暴力団など犯罪組織に資金が回っているという話も聞きます。完全養殖で安定して生産することができれば、少しは違法な流通もなくなるのではないでしょうか。最近はうなぎを見ると悲しい気持ちになってしまうほどです。

クルマエビ。完璧なフォルムだと思いませんか
クルマエビは完全養殖が行われている。しかも天然と遜色ない味

完全養殖うなぎの課題点

完全養殖のうなぎがスーパーに出回るようになるまでは、まだまだ時間がかかりそうです。その要因はいくつかあります。

そもそも全然量が足りない

今のうなぎ養殖に必要なシラウウナギの数はなんと1億匹以上といわれています。一方、完全養殖でようやく生産されたうなぎの数はまだまだ数千匹程度です。手間をかけての少量生産のためまったく採算が合わないのです。各研究施設では大量生産に向けて日夜研究が進められています。

うなぎの仔魚にはサメの卵が必要

うなぎの仔魚(稚魚よりもさらに小さな段階)を育てるためには『サメの卵(アブラツノザメの卵)』が用いられているそうです。サメの卵はもちろん天然資源ですので、安定して確保することは難しいかもしれません。今後も様々な餌が試されていくことでしょう。完全養殖うなぎの大量生産が待ち遠しいですね!出回ったときには大きな話題になりそうです。

さらに関心のある方は水産総合研究センターの資料をご覧ください

実はうなぎの研究データは広く一般に公開されています。論文のように難しいものではありませんので、興味のある方は読んでみることをおすすめします。
国立研究開発法人水産研究教育機構ホームページ『うなぎに関する研究情報』https://www.fra.affrc.go.jp/kseika/unagi/

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