私たちめだか水産は各地のマルシェに出店してメダカや関連グッズの販売を行っているのですが、最もよくいただく質問が『稚魚の育て方』についてです。うれしいことに皆さんメダカの成魚自体の飼育はうまくいっているようで、卵を毎日のように産むけどそこから先の稚魚が育たない…という方が多いように感じます。
過去にも同様のノウハウを記事にしましたが、これからメダカを飼う方や今年こそはメダカの稚魚を卵から育てたい!という方に向けて新たに記事を作成しました。
メダカ飼育やメダカの繁殖で最も難しいのは生まれてから2週間くらいまでの稚魚期のメダカの育て方です。むしろこの最難関を攻略できれば、メダカの飼育や繁殖は簡単です。初心者にも実践できるメダカの稚魚の育て方をご紹介します。メダカの繁殖[…]
メダカが産卵するための条件
まずはメダカが産卵するための条件を覚えておきましょう。
生後3か月から6か月くらい経過し大人になって成熟したメダカは、条件がよければ水温の高い春から初秋(4月から10月)にかけて毎日のように産卵します。
産卵のための条件とは、水温が18℃以上であること、日照時間が一日13時間以上であること、健康なオスとメスのメダカがそろっていること、メダカの飼育密度が適切であることなどが挙げられます。
メダカの産卵から採卵まで
メダカが産卵したら
メダカは基本的に夜明けから早朝に交尾・産卵します。メスのメダカのお腹に卵がぶら下がっている様子を確認できたら、卵を回収しましょう。
そして、卵を孵化させるための小さめのタッパー程度の容器と、稚魚を育てるための水槽や容器を用意しましょう。
卵の回収方法(採卵方法)
卵はメダカのお腹に纏絡糸(てんらくし)という粘着性のある糸のようなものでまとまってくっついています。
産卵後12時間程度でメダカのお腹から卵が離れるようになり、メダカは周りの水草などに卵を産み付ける行動をとります。
メダカの卵は硬い殻で覆われているので、指で直接触っても割れてしまうようなことはありません。
メダカの採卵方法:直接採卵
ちょっと乱暴な方法ですが、メダカがお腹に卵をつけている間にネットで捕獲し、指や柔らかい筆などで採卵します。
この方法は確実にすべての卵を回収することができますが、メダカにストレスを与えてしまうデメリットがあります。また、採卵のための時間もかかります。
メダカの採卵方法:産卵床などの採卵グッズを利用する
もっとも一般的な方法は、採卵グッズを使用することです。産卵床(さんらんしょう)と呼ばれるグッズは最近では100円ショップでも販売されています。
産卵床は台所用スポンジの硬い部分のような素材のものやヤシの実の繊維をほぐしたもの、ネットのような素材を丸めたものなど様々です。
いずれも設置方法は水槽など飼育容器に沈めておくだけでOKです。毎日~数日おきに産卵床を取り出し、卵をひとつずつ指で取るか、産卵床ごと他の容器に移しましょう。
メダカの採卵方法:水槽の底に沈んだ卵をとる
産卵床や砂利など何も入れていない容器でメダカを飼育している場合、卵がお腹から離れる昼~夕方ごろに底をスポイトなどで吸ってネットで濾してあげると、卵が回収できます。
この方法は大きな容器で数十匹のメダカを飼っている方には有効ですが、少々手間がかかります。
回収した卵は水道水で洗ってOK
卵は硬い殻によって覆われ周りの水とは遮断されているため、多少水道水で洗っても問題ありません。
水道水には殺菌効果があります。水道水で洗い、卵をひとつひとつバラバラにしておくことで孵化率がアップします。
メダカの孵化と稚魚の育て方
メダカの卵は別容器に移しておこう
回収してきた卵は別の容器に移しましょう。何故なら、生まれたばかりの稚魚を大人のメダカが捕食してしまうからです。
メダカは口のサイズに合う小さな生物であれば基本的になんでも食べてしまうと思って構いません。
そのためせっかく卵から稚魚が孵化しても、親メダカや一緒に飼っているメダカに捕食されてしまう場合があります。確実にメダカの稚魚を育てたいなら、卵を隔離して新たに水槽を立ち上げましょう。
卵から孵化したら水替えするのは困難になります。ある程度の大きさまで水替えせずに足し水だけで同じ容器で育てられるよう、大きめの容器を用意しましょう。
我が家では容量約25Lのプランターを使用し、これで数百匹の稚魚メダカを一気に育てています。
針子の育成には専用の大きめの容器を準備したほうが生存率がアップ!
ろ材または砂利も入れておこう
稚魚を育てている間、とくに針子の期間は水替えが難しくなります。新しく立ち上げた稚魚用の水槽には、親メダカの水槽で使っている砂利やろ材を入れて、バクテリアを増やしておきましょう。
無精卵は取り除こう
卵のなかにはうまく受精できずに白くカビてしまうものがあります。こうした無精卵は取り除いてやらないと周りの卵までカビがうつってしまうので注意しましょう。
メダカ業者さんの中にはカビ防止のために『メチレンブルー』という魚病薬を使う方もいらっしゃいますが、一般的には不要だと思います。他にほとんど使い道がありませんし染色力が強いため、洗濯物や床にかかってしまったりして家庭では扱いにくいです。効果は高いですが、使用する場合は注意しましょう。
水道水で孵化させる
メダカの卵はカルキを抜いていない水道水に入れておいても孵化します。採卵したら容器に水道水を入れて、できれば卵をひとつずつ手でバラしながら投入していきましょう。
孵化までの積算温度は250℃
メダカの受精卵が孵化するには積算温度で250℃必要といわれています。すなわち25℃の水温なら10日で孵化、20℃の水温なら12-13日で孵化、といった具合です。産卵する温度ならだいたい2週間もあれば孵化すると覚えておきましょう。
ここまでは水カビの発生にだけ注意していれば孵化するはずです。無事に孵化したら、最も難しい『針子』の育て方になります。ここからが肝心です!
メダカの針子の育て方!餌について
メダカの繁殖で最も難しいのは生まれた稚魚を大きくしていくところ。遊泳力が強くなる体長1cmくらいに育てるのが一番気を使います。ここを超えれば、安定して餌も食べられるようになり飼育難易度はとても簡単になります。
餌は口に入る大きさの粉を薄く広範囲に
メダカの稚魚は非常に小さく無力です。各ヒレもまだ発生しておらず、内臓も十分に発達していません。そのため当然ながら大人のメダカと同じ餌を食べることができません。遊泳力も強くないので常に餌が稚魚の周りにあることが重要です。うすーく広範囲に餌を撒くようにしましょう。餌がパウダー状になっていれば、水面でぱっと広がるはずです。
初期餌料は魚類の飼育でも最も大事
マグロやウナギなどの養殖魚でも同じく、魚類の稚魚期は口に入る大きさの餌を確保し稚魚に与えることが一番難しいとされています。この時期の餌を『初期餌料』と呼びます。完全養殖が可能になるにはこの初期餌料が非常に大切なんです。
餌は成魚用の餌をすりつぶすだけでもOK
餌は大人メダカ用のものをパウダー状にすりつぶすだけでもじゅうぶん育ちます。最近では稚魚用の餌も売っているところがありますので、すりつぶすのが面倒だという方は利用してみてもよいでしょう。
稚魚の餌の量は少なく、餌の回数は多くが基本
メダカの稚魚の餌は一回あたりの量は少なく、一日当たりの回数は多く、を基本としてください。稚魚は沈んでしまった餌を食べることはありません。水を汚す原因になってしまうだけですので、食べきれる量をこまめに与えることが重要です。目安としては一日3-4回でしょう。
インフゾリア(ゾウリムシ)ってどうよ?
インフゾリアはマニアの間では有名な初期餌料
メダカの稚魚の育て方をネットで熱心に調べていると、「インフゾリア」や「ゾウリムシ」という言葉を目にすると思います。インフゾリアはinfusoriaのカタカナ読みで、滴虫類・繊毛虫類という意味だそうです。どうやら今は学術的には使われていない用語なのですが、アクアリウムの世界ではミジンコやケンミジンコなどよりもさらに小さいプランクトンのことをインフゾリアと総称しているようです。
メダカの稚魚に与えるインフゾリアとしてはゾウリムシが有名です。最近では「インフゾリアの素」や「ゾウリムシ水」などの用品がメダカの飼育グッズとして販売されているのを見かけます。
ゾウリムシはいつの間にか発生することも
我が家では室内の水位の浅い水槽をずっと水換えしていなかったところ、水面にわずかに動き回る小さな小さなゾウリムシが発生しているのに気が付き、ずっと観察しているとメダカの稚魚がゾウリムシを食べているのがわかりました。
ゾウリムシを安定的に与えるのは難しい
家庭ではゾウリムシを使用するのは難しいと思います。費用も設備も必要となりますのでメダカ用の人工飼料を使用したほうが無難です。高価なグッズに頼るよりも、知識を身につけたほうがずっと飼育が上手になりますよ!
メダカの針子の育て方!水替えはどうする?
水替えなしで足し水だけでも育成可能
ある程度大きな容器で飼育していてじゅうぶんな水量があれば(目安としては30Lくらい)、水替えせずに小メダカのサイズ(1.5cmくらい)まで育てることができます。餌の食べ残しや排泄物などをスポイトで取り除くようにして、蒸発した分の水を足すようにしましょう。
スポイトは熱帯魚やメダカ用のものが販売されており、使い勝手もよくおすすめできます。
小さい容器ならスポイトで水替え!
もし狭い容器で稚魚を育てているなら少量ずつ水替えが必要になります。水替え時に稚魚を吸い込んでしまわないようスポイトなどで慎重に水を出しましょう。カルキ抜きをして水温を合わせた水をゆっくりと入れるようにしてください。
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